伊豆大島のくらしを伝える情報誌として発行しているフリーペーパー「12class」。
今回2年ぶりの発行となるタイミングでイベントを開催しました。
イベントでは、最新号12class vol.22の配布はもちろん、最新号の新コーナー「島の家族」に登場している篠崎農園の篠崎さんが育てた採れたて野菜をふんだんに使ったナツキチ特製のサンドウィッチの提供や、千葉県の南房総を中心とした地域の情報を伝えるフリーペーパー「0470-(ゼロヨンナナゼロ)」編集室の鎌田真史(かまだまさふみ)さんをゲストにお迎えしてのトークイベントを開催しました。
鎌田さんには地域でのご自身の活動や、地域の魅力の見つけ方、その魅力をフリーペーパーにまとめていく際に工夫していることなどお話を伺いました。
鎌田さんは房総の出身で、以前から地元に戻って地域に根づいた活動をしたいと考えていたそうです。
今では「0470-」の編集はもちろん、LOCAL COROLA+(ローカルコロラ)という動かなくなったワゴン車を使ったギャラリー、ワークショップ、期間限定ショップ等のレンタルスペースの運営や、キャンプ場の立て直しのお手伝い、廃校の再活用プロジェクト等、多岐にわたって活動されています。
フリーペーパー「0470-」にはvol.3より参加されたそうで、最初は紙面の折作業のお手伝いから始めたそうですが、やがて、コラムを担当するようになり、次第に編集にも携わるようになっていったそうです。
フリーペーパー「0470-」は2010年にvol.0を発行してから一貫して、自分たちが見聞きし感じた房総を等身大の言葉と表現で発信することを目指し、隔月のペースで刊行。メディアづくりをとおして、出会う人や眼に飛び込んでくる物事を楽しくみつめていきたいと思いながら、日々制作されています。
発刊当初の編集室は南房総らしい海辺の古民家で行われました。当時の編集室メンバーは、編集室となった場所で雑貨屋を経営されていた編集長、房総で生まれ育った人、房総に移り住んでお店を始めた人、房総に暮らしたことのある人、の4人。それぞれ状況はさまざまですが、みな房総に想いのある方で構成されたバランスのとれたチーム。
その後、編集長が新たに設立した雑貨屋「安房暮らしの研究所」に編集室を移して奇数月の発行スタイルになったそうです。
「0470-」の発行部数は2,500~3,000部で房総地域を中心に県内のカフェや雑貨店等、約80ヶ所に配布。
サポーター協賛金や定期購読料金、広告費等で運営をしているそうです。
創刊からこれまでに編集長を務められた方が3人いらっしゃるそうですが、それぞれの「0470-」に対する言葉が房総愛に満ちていて素敵でした。
初代編集長の創刊時の言葉
“そして今、房総に魅せられて暮らしはじめた人がいる。
房総にないものは、きっと必ずしもここになくてもいいんじゃないだろうか。
今ここにないもの、その中でひとつだけなくてはならないものがある。
それは自分たちのメディアだ。
だから今、0470をつくりはじめようと思う。”
2代目編集長の言葉
“先日ラジオから流れてきた、曲の1節
「僕が産まれたこの島の空を、僕はどれくらい知ってるんだろう。」
やけに耳に残り、頭の中を何度も巡っていました。
さて、僕自身はどうだろう?と考えてみると、まだまだ知らないことだらけ。
号を重ねるとともに新たな発見も増えていくような気がしています。”
現編集長の言葉
“房総には何もない。
ただ、房総らしさはたくさんある。
ならば、房総らしさを伝える媒体をつくろう。
僕は東京から南房総へ移住した一人。
素晴らしき財産が驚くほど存在するのに、地元の方をはじめ、県内、県外の人はまったくきづいていない。
小さい媒体ではありますが、房総の魅力を伝えていきたいと思います。”
そして、鎌田さんの想い
“野に飾らなく咲く植物も素敵ですが、鉢の中に飾られる植物にまた違う魅力を持たせる鉢絵付師の技に感動。
飾る、飾らない双方の魅力に気づきました。
僕の住む房総もどちらもが共存して欲しい。”
房総という土地や房総で生まれ育った地元の人の魅力と、房総に想いを持った鎌田さんのような若い方や外からの移住者の方々が仕掛ける新しい房総の魅力。双方が手をとりあいながら新たな房総をつくり上げていく。そんな現在進行形を伝えるのが「0470-」なんだろうな、と思いました。
鎌田さんのトークの後は、伊豆大島でお弁当やケータリングを行っているナツキチによる島野菜をふんだんに使ったサンドウィッチを食べながら、鎌田さんとトークセッションを実施しました。
トークセッションでは0470-の現編集長 菅野さんのお姉さんが以前に伊豆大島に暮らしていたことがあったというお話や、菅野さんが運営する安房暮らしの研究所で全国のフリーペーパーを展示するイベントで12classをピックアップしていただいたお話など、12classと0470-の意外なつながりからお話が始まりました。
-「0470-」の制作についてお伺いします。ネタの探し方や編集の進め方等、どのように制作を進めているのですか?
スカイプ等インターネット環境を利用した打ち合わせが多いです。そこでアイデアを出しあったり、メールで双方送りあったりしながら、内容を固めていきます。また、食事しながら具体的な内容を詰めていったり、会議らしい会議ではなくざっくばらんな雰囲気の中、つくり上げられていくことが多いです。
-その際に“房総らしさ”というか、地域を意識していることがありますか?
はい。メンバーが地元の人だったり移住者だったり、目線がそれぞれで異なっていたりアンテナの張り方は異なるのですが、みんな房総に想いのあるメンバーなので、“房総らしさ”はイメージしつつ、それぞれのポイントを共有し合ってテーマを決めていく感じですね。
-フリーペーパーを制作していて良かったと思うことはありますか?
やはり、取材を通じていろいろな方と知り合いになりつながることが嬉しいです。また、暮らし方も人それぞれなので、今まで気づかなかった房総での暮らしの魅力や地域の魅力など気づかせていただく機会がとても多いです。
-「0470-」の今後の展望について教えて頂けますか?
引き続き、房総という地域の魅力やそこに暮らす人々のライフスタイルを紹介していくとともに、文化や歴史も伝えていければと思っています。今のスタイルは維持しつつも地元の人も知らないような、時間の経過とともに埋もれてしまった情報なども伝えていけたらと思っています。
今回は、地域の媒体づくりに携わる方のお話を伺うことで、制作する際の姿勢だったり、想いだったり、共感する部分がとても多く、励みになりました。また、あらためて地域の媒体をつくることの意義やつくり手の気持ちや考えを再確認する、良い機会となりました。
〔主催〕東京都、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NPO法人kichi