『多様性をてらす』開催レポート

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はじめに

12月7日(土)に映画「みんなの学校」上映会とワークショップを組み合わせたイベント『多様性をてらす』を開催しました。

今回はイベント当日の様子をお伝えしたいと思います。

なお、今回のイベント企画・開催をきっかけに、地域における教育を考えるプロジェクトチーム「てらす-TERRACE-」を立ち上げました。今後、教育をテーマとした各種イベントの企画や提言を行うグループとして活動をしてまいります。

どうぞよろしくお願い致します!

イベント趣旨について

まず最初に今回のイベントの目的についてお話します。

「すべての子どもが安心して学んでいる奇跡の学校」として注目を集める公立小学校「大空小学校」の日常を紹介するドキュメンタリー映画「みんなの学校」では「特別支援学級」や「特別支援校」に通っていた子どもたちが、普通に他の子どもたちと同じ教室で学び、ともに成長していく様子がとらえられています。

そして、映像からは多様性を受け入れ尊重する社会や地域の姿が見えてきます。

多様性を受け入れることで、地域や社会に対してどのような変化がもたらされるのか?
そんなプロセスを一本の映画を通じて考えてみることで、私たちが暮らす地域や学校に対して別の角度から捉えてみるきっかけとなり、日々の暮らしの中で、あたり前過ぎて気づかなかった地域や学校のことに少しでも目を向ける機会になるのではないかと、そんな想いから今回のイベントを企画しました。

そして、今回のイベントのような気づきの機会を積み重ねていくことで「よりみんなが地域で幸せにくらすこと」について考えるきっかけになればと考えています。

イベント当日は参加者一人一人がお互いを思いやり、お互いの意見を尊重し自由に議論する、まさに理想とも言える活気あふれる場が形成されていました。

映画『みんなの学校』とは?

では、今回上映した映画『みんなの学校』についてご紹介します。

大阪府住吉区に“みんなの学校”と呼ばれている公立小学校「大空小学校」があります。
この小学校がめざすのは、「不登校ゼロ」。誰もが通える学校として他の学校に通えなくなった子がつぎつぎと転校してきます。そして、特別支援教育の対象となる子も、自分の気持ちをうまくコントロールできない子も、みんな同じ教室で学びます。

普通の公立小学校ですが、児童と教職員だけでなく、保護者や地域の人も一緒になって、誰もが通い続けることができる学校をつくりあげてきました。

この取組みは、支援が必要な児童のためだけのものではなく、例えば経験の浅い先生をベテランの先生たちが見守ることもあります。みんなで支え合い、お互いを尊重し合いながら、より理想的な教育の場を目指しています。いや、“教育の場”というよりも“暮らしの場”に近いのかもしれません。

子どもたちのどんな状態もそれぞれの個性と捉える。周りの子どもたちはもちろん、地域にとっても「自分とは違う隣人」が抱える問題を一人ひとりが思いやる力を培っています。

そんな『大空小学校』の日々を追ったドキュメンタリー映画『みんなの学校』からは、ひとつの学校を起点に、学校を取り巻く人が、地域が、そして、社会が変わっていく様子が見えてきます。

気づきの記録

映画を鑑賞した後は、気づいたことや感心したこと、参考にしたいことなどを自由に話し合い、シェアするワークショップを開催しました。

お互いの意見を尊重し、自由な発想で話し合える雰囲気づくりを大切に、みんなで考える機会を設けました。

今回実施したワークショップでは、映画を通じて思ったり感じたりしたことをテーマに沿って話し合うことで、学校や教育についての現状や理想についてみんなで意見を交わしました。
そんな中から出た意見をいくつかピックアップ・整理してご紹介したいと思います。

開かれた学校、地域とつながる学校とは?

現状の学校は開いているというよりもむしろ閉じた場所になっていないか?
学校を訪れても居場所に困ったり、閉鎖的な感じがしてしまう。それはおそらく、教育者、生徒、保護者、という明確な立場で時間や場所が区切られているのが原因ではないかと思う。

学校は世代を超えて地域の人と人をつなぐコミュニティを促進させる場所として大いに可能性に満ちた場所だと思う。もっと地域に開かれた場所になって欲しい。

大げさに言うと、学年ごと、クラスごとに分ける必要もないのではないか。そして、先生と保護者が話せる機会をもっと増やしていくべきだと思う。その際、先生と保護者という立場ではなく、同じ地域に暮らす「住民」として同じ立場や土俵で話す、という意識が必要。大島は海に囲まれた限られた場所だからこそ、「島民」という共通カテゴリーでつながることができそうで、「島民」としてのつながりをつくっていくことで、教員・生徒・保護者という線引きを取っ払って共通価値のもと話しをすることができるので、より意義ある場になると思う。

社会的な立場(鎧と表現する人も)を背後に抱えながらお互い接していると、その範囲内でしか物事を考えられなかったり、自分の立場を守ろうと責任転嫁してしまったり、本来の自由なコミュニケーションができなくなってしまう。『みんなの学校』のように、学校に関わる全ての人がすべての生徒(全ての関係者)を見守るような姿勢が大切だと思う。

教育とは何か?

学校教育だけが教育の全てではないわけで、例えば島内には様々な分野で活躍されている“人”がいる、そういった“人”と子どもたちが接する機会をつくることで、学校と地域がつながり、より開かれた場所になっていく。つまり、地域教育にも今まで以上に目を向けていくべきだと思う。

学校の授業ではみんなが一緒に同じ教科を同じペース、同じやり方で受けるのがあたり前になっていて、子供はそんな教育の型にはまることを余儀なくされている。本来人間は多種多様で一つの型にはあてはめられないはずで、そんな多種多様な子どもに学校が合わせていく必要があるのではと思う。そして、子供にもっと自由に思考できる機会を設けるべき。今の世の中は変化に柔軟に反応し協調しながら自ら思考できる能力が求められていて、そこを伸ばしていくことを基本目的とした教育を考えていく必要があると思う。

また、答えは一つではなく、さらに先生の答えが絶対ではないと思う。
決して〇×で決めずに常に子供の答えやその解答プロセスに耳を傾けることが必要。
先生単独で善悪を判断してしまうのは少々危険で、常に子どもたちの意見に耳を傾け、真っ向から否定せず、寄りそう姿勢が大切だと思う。

おわりに

というわけで、一本の映画から様々な意見が交わされ、いろいろと考えさせられる場となりました。上にあげた意見はあくまでもイベントの場で出た意見の一部です。もちろん、今の教育を否定するわけではありません。私たちが想像する以上に現場には大変な苦労があると思います。今回のイベントを通じて少しでも教育についてみんなで考えてより良い学校づくり、地域づくりについて考えるきっかけとなれば幸いです。

これからの社会は潜在的な課題に気づき、クリエイティブに発想し、取り組むスタンスが求められます。また、ひとつの目標に対して複数メンバーと協業しながら取り組んでいくケースや自分で決めて、自分で取り組む自立の姿勢が求められるケースなど、よりフレキシブルにモノゴトに接する姿勢が求められています。

そんな時代のニーズに敏感に反応しながら、教育現場もライブ感覚を大切に、ダイナミックにアップデートしていく必要があるのではないかと思います。

さて、次回のイベント(てらす第2回)は2月11日(火・祝)開催予定です。場所は同じく寿し光1階の和歌さんです!詳細が決まり次第追ってNPO法人kichiのFacebookをはじめとしたSNS等でご案内いたします。どうぞお楽しみに!

「てらす-TERRACE-」の今後の活動にぜひご注目ください。地域における教育について、一緒に考えていきましょう!

Data

『てらす-TERRACE-』

地域の未来を支えていくのは子どもたちです。そんな子どもたちの成長にとって本当に大切なこと、本当に必要なことは何だろう?

離島だからってあきらめるのではなく、離島だからこそ、子どもたちの可能性を広げたい。そのために私たち大人にできることを考え実践していきたい。

「てらす -TERRACE-」は子どもたちが未来に向けて思いっきり力を発揮できる舞台づくりを進めるプロジェクトチームです。

writer
TERRACE

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