映画『二十代の夏』高野監督インタビュー

Category Culture

映画『二十代の夏』

駆け出し小説家のカズキ(28)は新作執筆のため、故郷の島で夏休みを過ごしていた。ひょんなことから、滞在していたペンションの管理をカズキは任されることになり、宿泊客の女性・レイコ(28)とユカ(24)に出会う。カズキはレイコに昔付き合っていた女性の面影を見出し、いとも簡単に心奪われてしまう。ある晩、酒を飲んでいた3人はユカの奔放な振る舞いをきっかけに大きく衝突をはじめる。(映画『二十代の夏』あらすじより)

『二十代の夏』というタイトルの全編伊豆大島でロケを行った伊豆大島が舞台の映画が完成しました。実はこの作品の前に『恋はフェリーに乗って』というタイトルで一度完成しており、伊豆大島においても完成上映会が開催されました。

一度は完成した映画をなぜもう一度再編集し、タイトルまでも変更することになったのか?高野監督が映画監督を目指そうと思ったエピソード等、本作の脚本・監督をつとめた高野監督にお話を伺いました。

-まだお若い高野監督ですが、映画監督を目指すようになったのはいつ頃ですか?また映画監督になりたいと思ったきっかけなどエピソードがあれば教えてください

子どもの頃から映画が大好きで恐ろしい数の映画を見ているという映画監督は多いですが、ぼくはそうではありません。高校時代に文化祭の出し物として自主映画を撮ったのがきかっけでした。

映画を見た観客が喜んだり、楽しんだりしてくれることにただただ感動を覚えました。また、友人たちと撮影を進めるにあたって、他者とはこんなにも分かりあえなく、そして努力することで少しだけ分かりあえる可能性があることを知り、映画制作に夢中になりました。

-伊豆大島で映画を撮ろうと思ったきっかけを教えてください

普段何気なく生きている1日1日の積み重ねが伊豆大島での映画制作に結びついた気が今はしていますが…、わかりやすいきっかけですと2013年に大島で過ごした夏休みです。大島には豊かさがあると思いました。もちろん大自然というのもそうですが、東京にはない人と人の結びつきに驚きました。島のそこら中で人と人がすれ違って会話が生まれていました。ぼく自身も港や温泉で、ゲストハウスの宿泊者にすれ違い挨拶をしました。大島の狭さは豊かさだと思いました。

-離島での撮影は大変だったのでは?

お金の面では大変でした。自宅から通える撮影とは違い、スタッフ/キャスト全員分の乗船代・宿泊費・食費を用意しなくてはなりません。正攻法では予算にはまらなかったので、島の人たちお一人お一人に協力をお願いして何とか実現可能な予算に収まりました。労力はかかりましたが、そのぶん島の人たちと接する機会や密度は増えて、映画の内容にも良い影響や考えもしなかったアイデアを与えてくれたと思っています。

-今回の映画のキャスティングはどのように決められたのですか?

主演の戎哲史さんは以前、一緒に仕事したことがあり、福原舞弓さんはたくさんの俳優プロフィールを見た中からキャスティングしました。ひとりだけ女性のメインキャストがなかなか決まらなかったのですが、島の友人に「面白い人がいるよ」と教えてもらい、当時、ミス大島に就任したばかりの島津恵梨花さんとお会いしました。お願いする役のキャラクターがまだあやふやだったのですが、島津さんと小一時間お話するとたくさんのアイデアが浮かび、その場で出演してほしいとお願いしました。

-2016年3月に「恋はフェリーに乗って」のタイトルで完成したものの、今回再編集されてタイトルも「二十代の夏」に変更になりました。それはなぜですか?

助成金事業として映画制作を進めていたので2016年3月迄の完成と上映が必要でした。しかし、まだ編集で良くなる余地があるというのは感覚的にわかっていて、4月以降も特に期限を設けず、編集を続けていました。時間はかかってしまいましたが、自分としても納得できてより多くの人に見てもらいたい映画になりました。

-今回の編集により上映時間も70分から42分に大幅に短縮されましたが、高野監督は脚本と編集の関係や位置づけをどのようにお考えですか?

脚本の勉強が不十分なのでこんなこと言っていいのかわかりませんが、ぼくは脚本なんかどっかに捨ててしまって映画を撮りたいと常々思っています。

現在はその能力がまだないので脚本を起点に映画づくりを進めていますが、やっぱり心の中ではカメラの前で脚本に書いてあることよりも面白いことが起こるように期待しています。脚本の段階では考えもしなかった撮影素材たちを1本の魅力ある作品としてまとめるのが編集です。今回の場合、「脚本より面白い映像」がたくさん撮れたため、編集に時間が必要だったのかもしれません。

-今後の高野監督の目標や展望などありましたら教えて下さい

いつになっても映画を撮り続けることが目標です。近い未来の展望だと本作を海外映画祭に出品して世界中をまわってみたいです。様々な価値観に本作やぼくが晒されたとき、どんなことが起きるのか観察してみたいです。大島の豊かさも世界に発信できたら、少しは島の人たちに恩返しできるのではとも思っています。しかし、英語字幕を制作するなど新たにたくさんお金がかかり…助けても良いよという方、謹んでご連絡お待ちしています。

Data

監督 高野 徹

1988年生まれ。横浜国立大学大学院都市イノベーション学府修了。2010年に監督した『 濡れるのは恋人たちだけではない』が、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭や北京獨立電影展など、国内外の映画祭に出品され高い評価を得る。

映画『二十代の夏』伊豆大島先行上映会のお知らせ

今年3月に上映しました『恋はフェリーに乗って』は、再編集を経てタイトルも新たに『二十代の夏』となって完成!そこで、本作の撮影場所としても登場するkichiにてお披露目の上映会(上映時間42分)を行うこととなりました。上映後には監督他のトークショーも予定しておりますので、お誘い合わせの上、ご来場ください。

-開催概要-
日時:10月22日(土)19時00分~(18時30分開場)
会場:kichi(東京都大島町元町1-9-4 高田土産店2階)
料金:1,000円(1ドリンク付)
お問合せ:filmoshima@yahoo.co.jp
公式WEBサイト:http://summer20s.tumblr.com/

Tsutomu Chiba writer
Tsutomu Chiba
 

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